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「朝会に通勤電車からリモート参加」する部下 遅刻扱いにはならないの?

Q 毎朝のミーティングに、通勤電車からリモート参加する部下がいます。 私の会社では、在宅と出社を掛け合わせたハイブリッドワークを採用していますが、その部下はまだ新人のため、週3日以上の出社を義務付けています。本来であれば始業時刻までに出社してほしいのですが、最近は通勤電車から朝会に出席し、始業30分〜1時間後になってやっと会社に到着をしています。 注意しても「会議には参加している」「在宅の人と変わらない」と悪びれないため、対応に困っています。こうした行動は遅刻扱いにならないのでしょうか。また、この部下にどのように向き合えばいいでしょうか。

A まずは、こちらの会社で導入されているハイブリッドワークがどのような内容で定められているのか、定義づけられているのかをあらためて確認いただきたいです。
具体的には、ハイブリッドワーク上の在宅ワーク(テレワーク)を行う場合の就業場所について、どのように制度化されているのかを確認いただきたいのですが、一般的には、在宅ワーク(テレワーク)を行う場所については、労働者の自宅や、それ以外の場所としては、施設利用型としてのサテライトオフィス、モバイル勤務としての交通機関の車内、カフェ等が考えられます。

例えば、営業職である場合には頻繁に外出することが多く、移動中などの交通機関の車内やカフェ等でも効率的に業務を行うことができれば、無駄な移動時間を削減することで生産性の向上に繋がるメリットが有りますから、交通機関の車内やカフェなどもテレワークの就業場所として認められていることがあります。
一方で、営業職などではない場合には、「業務に専念することのできる静かな作業環境やセキュリティの安全性が確保ができる場所」としての自宅や会社(自社グループ内の専用サテライトオフィスなども含む)以外は、就業場所として不適切ということが考えられます。

したがって、会社のテレワーク規程に、そもそもの就業場所として、今回問題となっている「交通機関の車内」が認められているかどうかをご確認ください。
御社に営業職がなかったり、あったとしても、セキュリティの安全性の確保の観点から「交通機関の車内」については就業場所として認めていないかもしれません。
会社の在宅ワーク(テレワーク)規程で、もともと就業場所として「交通機関の車内」が認められていないのであれば、問題となっている新人部下も含めて全ての社員が通勤電車の中からの会議参加は、勤務として認められないことになるのではないでしょうか。

次に、会社の在宅ワーク(テレワーク)規程で、「交通機関の車内」もテレワークの就業場所として認められている場合について検討します。
まずは、その場合に、適用の対象となる労働者や対象となる際の条件等を確認する必要があろうかと思います。
先ほども説明したとおり、「自宅やサテライトオフィス」と違って、カフェやホテル、移動中の「交通機関の車内」といった就業場所で業務を行ういわゆるモバイルワークに適している職種は、1日に何社も取引先や顧客へ訪問する営業職と言われています。
営業職は外出や出張が多いため、ノートパソコンやタブレット、スマートフォン等を使って、移動中に連絡を取り合ったり、社内システムにアクセスし提案資料を作成・共有したり、会議に参加したりできることで、そのスキマ時間を有効活用でき、大変メリットがあるからです。その一方で、モバイルワークは、情報漏えい等セキュリティーリスクが非常に高く、導入の際は徹底的に策を講じなければならないため、その必要がなければ、リスクを負ってモバイルワークを導入することの必要性はないと考えられます。
御社の「交通機関の車内」をモバイル勤務の就業場所として認める場合の要件等、適用の対象となる労働者の業務の内容がどのように定められているのかは、ご相談の内容だけでは判らないですが、少なくとも、本件新人部下については、例えば、営業職であったとしても、現時点では、移動中の交通機関の車内やカフェ等で効率的に業務を行う必要性はないと考えられるのではないでしょうか。
したがって、本件相談の対象となっている新人部下については、モバイルワークの適用対象と考えにくく、交通機関の車内から会議に参加することは認められないと、会社が主張することには、一定程度の合理性があると考えられます。
その上で、遅刻扱いとするかどうかについては、会社の就業規則上の勤怠規定の定めに沿って対応されることが望ましいです。

なお、このような就業場所の問題以外にも、テレワークについては、中抜けによる休憩の取扱の問題や長時間労働になる可能性が生じる問題など、注意しなければならない事柄が数多くあります。さらに、会社の業種、対象労働者の職種、業務内容、育児・介護・傷病等の状況等などにより、在宅ワーク(テレワーク)勤務の適正な取扱も異なってくるため、会社として、適宜、具体的な状況に照らして適正に対応できるようにしたいものです。


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