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2023年08月30日 [情報]

自爆営業の推奨、未達成で給与減額ー「過度な営業ノルマ」は違法にならないの?

概要:私が働く業界は、伝統的に営業ノルマが厳しい業界です。自社や競合企業で聞く事例では、ノルマ未達成者へのパワハラまがいの𠮟責やサービス残業の横行はもちろん、あと少しで達成できる場合の自爆営業の推奨、未達成者への給与減額や長期の未達成を理由とした退職の推奨などが行われています。これらは、どこまでが合法でどこからが違法なのでしょうか。

A パワハラやサービス残業が違法であることが問題となって久しいですが、まだまだ業界や企業規模によっては改善が難しい状況の会社が相当数あるようですね。
 本件の叱責もパワハラに該当するのであれば、労働施策総合推進法に抵触しますし、サービス残業も時間外労働に対して割増賃金が未払いであれば 労働基準法第37条に抵触するでしょう。
 ノルマ未達成者に対する叱責がパワハラに該当するかどうかは、その叱責が「業務上必要」なのかどうか、業務上必要な注意、指導の範囲内であればパワハラには該当しないと考えられますが、叱責が人格を否定するような内容であったり、職場内で見せしめ的に長時間にわたって行われたり、必要以上に執拗に繰り返されたり、特定の社員だけに対して行われるなど公平性が担保されていない場合などは、業務上必要な指導、注意の範囲を超えていると思われますからパワハラに該当すると言えるでしょう。

 また「自爆営業の推奨」については、この「推奨」が本当に「すすめる」程度のものであって、ノルマ未達成の場合であっても必ずしも自ら契約あるいは自社商品を購入しなければならないという訳ではなく、本当の意味で、契約するかどうかあるいは購入するかどうかは、社員の自主的判断に任せられているというのであれば違法性は低いと考えられます。
 しかしながら、言葉では「推奨」としつつも、実質的には、社員の本意に反して自ら契約や自社商品の購入をせざるを得ない状況になっているという場合には、賃金の全額払いを義務づけている労働基準法第24条に抵触すると考えられますし、公序良俗に反する法律行為を無効とする民法第90条に抵触する可能性が高いと考えられます。

 そして、ここでご留意いただきたいのは、ノルマ達成のために、社員の本意で自ら契約したり自社商品を購入したりする場合については違法にならなくとも、会社全体としてそういう風土ができてしまうことに大きな問題があるということです。必ずしも全ての社員がそのように考えるわけではなく、中には断りづらいために仕方なく「自爆営業」を行う社員も大勢いるはずです。不本意ながら「自爆営業」を行う社員が出ないよう、会社風土としても「自爆営業」が醸成されないよう、注意が必要なのではないでしょうか。

 なお「ノルマ未達成を理由とするペナルティとしての給与減額」は認められない可能性が高いと言えるでしょう。
 もちろん、ペナルティとしてのいわゆる懲戒処分としての賃金減額という対応そのものについては、当該処分が就業規則に適正に定められ適正な手続を取って行われる場合には認められる処分ではありますが、本件のように「ノルマ未達成」が懲戒処分の対象事由となり得るかについては、甚だ疑問であり難しいのではないでしょうか。懲戒処分の対象事由には非違行為がある場合に認められるものだからです。

 一方で、ノルマ達成に向けて「歩合制」を導入するなどの方法で、ノルマ達成率の高い社員と残念ながら達成率の低いあるいは未達成の社員とで賃金に差を付け、営業社員のモチベーションアップに繋げる工夫はできるかと思います。
 成果を求める業界、営業ノルマが必須の業界では、正しい運用をされればメリットのある給与制度ですから、導入を検討されても良いでしょう。

最後に、「長期のノルマ未達成を理由とした退職の推奨」については、社員が本意から勧奨に応じて退職に合意した場合にはトラブルとなりませんが、例えば、勧奨時に「退職しなければ解雇する」という発言によったり、はっきりと退職を拒否したにも関わらず何度も退職勧奨をされたり、長時間、多数回にわたり退職勧奨されたりする等して退職に応じた場合には、後から、「一方的に退職を強要された」と社員から訴えられることはよくある話です。
 この場合には退職勧奨ではなく解雇として、その有効性が問われることになり、「長期のノルマ未達成」を能力不足、成績不足などとして解雇ができるかどうかという問題になると考えられます。どの程度、能力が不足しているのか、成績不良なのか客観的に捉える必要がありますし、未達の間、会社や上司が達成できるよう指導、教育などを十分に行っていたかどうか、指導を尽くしたかどうかも問われることになります。
 社員に、ノルマ達成のための指導、教育を十分に行っておらず、適切な指導を行っていれば能力向上、ひいてはノルマ達成の余地もあったと判断される場合には、解雇無効と判示される可能性は高いでしょう。
 そもそも、社会通念上明らかに達成できないようなノルマであったとしたら、もちろん解雇は無効と判断されるでしょうし、ノルマ未達という能力不足、成績不良の程度が解雇という厳しい処分に相当すると判断されること自体難しく認められないのではないでしょうか。
 過度なノルマ、達成困難なノルマを設定すること自体、パワハラに該当し違法と判断されることも大いにありますから注意が必要です。


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