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原則参加の会議の日にばかり有給を取る社員 拒否はできる?

概要:原則参加としている会議の日にばかり有給を取る社員がいて、困っています。
その社員は営業部員なのですが、部員が前月の振り返りや、その月の行動計画などを共有する月例会議の日にばかり有給を取っています。取り立てて成績が悪いわけでもなく、会議に必要な情報は事前に提出してくれているのですが、その場でのディスカッションができず、困っています。
こうしたあからさまな有給の取り方を拒否することはできますか? ハラスメントになるのではないかと不安もあり、あまり強く言えずにいます。


A ご相談内容だけで判断する限りでは、本件の有給休暇取得の申出について拒否はできないと考えられます。
 有給休暇は、ご存じのとおり、大前提として、会社側の承認で発生するものではなく、労働者が6か月以上継続勤務し全労働日の8割以上出勤することにより、法律上当然に発生する労働者の権利となっており(労基法39条1項)、利用目的を明らかにすることなく、取得日についても労働者が自由に指定できるものとされています。

 したがって、会社は、社員からの有給休暇取得申請について通常拒否はできず、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、有給休暇を他の時季に与える時季変更権の行使ができるに過ぎません。
 本件相談の中の営業部員は、会議で必要な前月の振り返りや、その月の行動計画などの共有すべき情報を事前に提供するなどしており、会議自体もこの営業社員の不参加により直ちに開催できないという状況ではないようですから、事業の正常な運営を妨げる場合に該当するとまでは言えないと考えられるからです。
 とはいえ、代替者ではなく本人によるディスカッションが会議の重要な要素の一つである場合には、当該営業社員には会議に参加してもらいたいと考えるのも至極当然のことと思いますから、本件については、いかに、本人自ら会議に参加してもらえるようにするかについて検討することをおすすめします。

 そもそも、毎回、原則参加の会議の日にばかり有給休暇を取得申請するということは、何か会議に参加したくない事由があるのではないでしょうか。有給休暇取得の申請事由を聴くのはトラブルとなる可能性もありますが、会議に参加したくない事由を会社側が丁寧に確認することで、参加ができるよう対策を講じたり工夫したりすることは、社員に対する配慮として有効な方法と考えられます。
確認した結果、ただ単に面倒であるという理由であったとしても、また参加したくない事由あるいは参加できない事情について確認できなかったとしても、例えば、「いつであれば会議に参加できるのか」を開催日を決定する前に事前に確認し、それに合せて会議の日程を調整することも一つの方法です。

ちなみに、会社の時季変更権を行使することができる場合、つまり事業の正常な運営を妨げる場合とは、有給休暇を取得する日の仕事が、その労働者の担当している業務や所属する部、課、係などの一定範囲の業務運営に不可欠であり、代わりの労働者を確保することが困難な状態を指します。
 ただし会社は、時季変更権を行使する前に、労働者が指定した時季に有給休暇が取得できるよう、勤務割や勤務シフトを変更したり、代わりの代替要員を確保したりするなどの「相当程度の配慮」をすることが求められています。このような努力を尽くさないで時季を変更することは認められていませんので注意が必要です。

 例えば、「弘前電報電話局事件」【最判S62.7.10】では、弘前電報電話局施設部機械課に勤務していた者が勤務割において日勤勤務に当たっていた日につき有給休暇の時季指定をしたところ、上司が時季変更したことについて争われましたが、
判決の内容は、勤務割による勤務体制が取られている事業場において、会社としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあるにもかかわらず、会社がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要な人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げるということはできないと解され、時季変更権の行使は、無効と判断されています。


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